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公開日:2025/07/08 00:00
更新日:2025/10/17 15:19
切削油の種類とは?役割や効果、選び方から代用品まで徹底解説

金属を削ったり加工したりする際に欠かせない存在が「切削油」です。加工の精度や仕上がりを左右するだけでなく、工具の寿命や作業効率にも大きな影響を与えるこの油は、目的や使い方によってさまざまな種類があります。本記事では、切削油の役割や効果、代表的な種類の違いはもちろん、加工方法や素材に合わせた選び方、さらには代用品の可能性についても詳しく解説します。これから金属加工を始める方にもわかりやすく、実用的な知識をお届けします。
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切削油の基本

金属加工の現場では非常に重要なのが「切削油」です。加工中に発生する熱や摩擦を抑え、道具や材料を守るだけでなく、仕上がりの美しさや作業効率にも大きく関わります。この章では、切削油とはどんなものか、そしてなぜそれが加工において欠かせないのかという基本的なポイントを解説します。
切削油とは何か
切削油とは、金属を削ったり、磨いたりする加工のときに使う専用の油のことです。加工中に発生する熱や摩擦を抑えることで、工具の摩耗を減らし、作業の精度や仕上がりを向上させる役割を持ちます。また、削ったときに出る切りくずを洗い流したり、金属がさびるのを防いだりする効果もあり、加工の品質と安全性を保つために欠かせない存在です。種類や使い方によって効果が変わるため、作業内容に合った選定が重要になります。
切削油の役割
切削油には、金属加工をスムーズかつ高品質に行うための重要な役割があります。主な役割は次の4つです。
・潤滑
工具と金属の摩擦を減らし、工具の摩耗を防いだり、仕上がりをなめらかにしたりします。
・冷却
加工中に発生する熱を冷まして、工具や材料の変形・変色を防ぎます。
・洗浄
削った時に出る切りくずや汚れを洗い流し、トラブルや加工ミスを防ぎます。
・防錆
加工直後の金属が空気や水分でさびるのを防ぎ、製品や工具の寿命をのばします。
このように、切削油は「守る」「冷ます」「流す」「仕上げる」といった働きで、金属加工における影の立役者となっています。
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切削油の種類とその特性

切削油にはさまざまな種類があり、使う目的や加工内容によって最適なタイプが異なります。大きく分けると「水溶性」と「不水溶性」の2つがあり、それぞれ冷却に強いもの、潤滑に優れたものなど特徴が異なります。この章では、代表的な切削油の種類とその特性についてわかりやすく紹介します。適切な切削油を選ぶための基礎知識として、まずはその違いをしっかり理解しましょう。
水溶性切削油の特徴と用途
水溶性切削油は、水で薄めて使う切削油です。最大の特徴は冷却性の高さで、加工中に発生する熱を素早く下げ、工具や加工物の変形を防ぎます。引火の心配がなく、安全性にも優れているため、自動化ラインなどでも安心して使われます。ただし、潤滑性や防錆性はやや劣るため、使用目的に応じたタイプの選定が重要です。
水溶性切削油には、成分や見た目の違いによって次の3タイプがあります。
| 種類 |
外観 |
特徴 |
主な用途 |
| エマルジョン(A1種) |
乳白色 |
潤滑性が高く、重切削に適している |
鋼やアルミの切削 |
| ソリュブル(A2種) |
半透明~透明 |
冷却性・洗浄性・潤滑性のバランスが良い |
一般的な切削や研削加工 |
| ソリューション(A3種) |
透明(多くは緑色) |
冷却性と消泡性に優れ、工具にやさしい |
精密な研削、鋳鉄や鋼の仕上げ加工 |
水溶性切削油は、使いやすさと安全性のバランスが取れているため、多くの加工現場で採用されています。選定時は、目的に合ったタイプを選ぶことがポイントです。
不溶性切削油が適する加工とは
不溶性切削油は、水で薄めずにそのまま使うタイプの切削油で、「ストレートオイル」とも呼ばれます。潤滑性や防錆性にすぐれており、特に高精度な加工や難削材の加工に適しています。
一方で、冷却性能は水溶性より劣り、引火の危険性もあるため、安全な取り扱いと適切な管理が必要です。主な特徴は以下の通りです。
・潤滑性が高い
加工中の摩擦をしっかり抑え、工具の寿命をのばし、滑らかな仕上がりが得られる。
・防錆性能に優れる
金属の表面を油膜で守り、空気や湿気によるサビの発生を抑える。
・冷却性は控えめ
熱を逃がす力は水溶性に比べて弱く、高速回転など熱がこもる加工には不向きな場合もある。
・引火の可能性あり
油そのものが燃える性質を持つため、使用環境には注意が必要。
また、主な用途は以下の通りです。
・仕上げ精度を重視する加工
細かくて正確な削りが求められる場面で活躍。
・硬くて削りにくい材料(難削材)の加工
ステンレスやチタンなど、摩耗が大きい素材に向いている。
・工具に強い負荷がかかる作業
タップ加工やブローチ加工など、力が必要な加工に適している。
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切削油選びのポイント
切削油は、どれを選んでも同じというわけではありません。加工する材料や加工方法によって、求められる性能が異なるため、それに合った種類を選ぶことが重要です。適切な切削油を使えば、仕上がりの精度や工具の寿命、作業の安全性にまで良い影響を与えます。この章では、切削油を選ぶ際に押さえておきたい基本的なポイントを紹介します。
加工材料による切削油の選択基準
切削油は、加工する素材ごとに適した種類を選ぶことで、仕上がりの品質や工具の寿命が大きく変わります。以下に代表的な材料と、それぞれに合う切削油の選び方をまとめました。
| 加工材料 |
推奨される切削油の種類 |
理由 |
| 鋼(炭素鋼・合金鋼など) |
不水溶性(極圧添加剤を多く含む油剤)水溶性(エマルション) |
高潤滑性が必要。重切削には硫黄系極圧添加剤入りが有効 |
| 鋳鉄(FC、FCDなど) |
水溶性 |
さびや硬度上昇への対策が必要 |
| アルミニウム・アルミ合金 |
水溶性 |
変色や成分溶出による硬度変化を防ぐ |
| 銅・銅合金 |
水溶性 |
腐食を避けるため硫黄系極圧添加剤は不適 |
加工方法別の適切な切削油
加工方法に応じて最適な切削油を選ぶことは、加工品質や工具寿命の向上に直結します。以下に、代表的な加工方法ごとに適した切削油の種類とその理由をまとめました。
| 加工方法 |
推奨される切削油の種類 |
理由 |
| 旋削加工 |
水溶性(エマルジョン等)不水溶性(N3種) |
高速加工では冷却重視、精密加工では潤滑重視 |
| フライス加工 |
不水溶性(全般)またはドライ加工 |
熱衝撃による刃こぼれ防止 |
| 穴あけ加工 |
水溶性(極圧入り)不水溶性(N3・N4種) |
冷却が必要、精密加工には低粘度が有効 |
| リーマ加工 |
不水溶性(N3・N4種)水溶性(極圧入り) |
摩耗と構成刃先の防止 |
| タップ加工 |
不水溶性(極圧入り)水溶性(高濃度) |
強い摩擦に対応、潤滑性が重要 |
| ブローチ加工 |
不水溶性(N4種) |
高精度と長寿命の両立に適している |
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切削油使用時の注意点

切削油を効果的に使うためには、ただ選ぶだけでなく、正しく取り扱い、適切に管理することが欠かせません。使用方法を誤ると、加工不良や工具のトラブルだけでなく、作業者の健康や安全にも影響を及ぼすおそれがあります。この章では、切削油を使う際に注意すべきポイントについて、実務に役立つ視点から整理して紹介します。
切削油の管理方法
切削油を効果的に使用するためには、日常的な管理が欠かせません。特に水溶性切削油は劣化しやすいため、以下のポイントを押さえて管理を行いましょう。
水溶性切削油の管理ポイント
・濃度管理:適切な濃度を維持することで、潤滑性や冷却性を確保できます。
・pH管理:pH値を定期的に測定し、腐敗や錆の発生を防ぎます。
・異物の除去:切りくずや浮上油を定期的に除去し、油の劣化を防ぎます。
・希釈方法の遵守:希釈時は水に原液を加える順序を守り、均一な混合を心がけます。
・タンクの清掃:定期的にタンクを清掃し、微生物の繁殖や悪臭の発生を防ぎます。
不水溶性切削油の管理ポイント
・異物混入の防止:切りくずや他の油種の混入を避け、油の品質を維持します。
・粘度の確認:定期的に粘度を測定し、適切な潤滑性を保ちます。
・水分の管理:水分の混入を防ぎ、錆の発生を抑制します。
・保管環境の整備:直射日光や高温多湿を避け、安定した環境で保管します。
点検時のポイント
切削油を安定して使い続けるためには、日常の点検が欠かせません。まず油の量を確認し、急な減少や増加がないかを見ます。次に濃度やpHを測定し、基準から外れていないかをチェックします。色やにおいの変化があれば劣化のサインです。また、ポンプの異音や圧力の低下、フィルターやストレーナーの詰まりなども忘れずに確認し、異常があれば早めに対応することが重要です。これらの点検を習慣づけることで、加工トラブルの予防につながります。
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切削油に関する法律と規制
切削油の使用にはいくつかの法律や規制が関わっています。まず、不水溶性切削油は引火性があるため、消防法により危険物として扱われ、保管量によっては届出や設備の設置が必要です。また、労働安全衛生法により、有害な成分を含む場合は安全データシート(SDS)の提供や換気設備の設置が求められます。さらに、使用済みの切削油は産業廃棄物として、適切な処理とマニフェスト管理が義務付けられています。PRTR法により、特定の化学物質を多量に使用する場合には国への届出も必要です。こうした法令を守ることが、安全で適正な運用につながります。
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切削油の代用になるもの

切削油は専用品として使われるのが基本ですが、手元にない場合や一時的な対応が求められる場面では、代用品を検討することもあります。ただし、代用することで性能や安全性に影響が出る可能性もあるため、目的や加工条件をよく理解した上で判断することが大切です。ここでは、一般的に知られている代用品と、それぞれの注意点について紹介します。
サラダ油やオリーブオイル
サラダ油やオリーブオイルは、潤滑性があることから簡易的な切削油の代用品として使われることがあります。特に家庭用の軽い加工やDIYレベルの作業では、一時的な代用として一定の効果を発揮します。摩擦を減らし、切削面の焼き付きや工具の損傷を軽減できる場合があります。
ただし、これらの食用油は本来加工用に設計されていないため、高温になる加工や長時間の作業には不向きです。酸化しやすく、時間が経つとベタついたり、劣化による焦げやにおいの原因にもなります。また、防錆性や冷却性はほとんど期待できないため、金属の表面がサビやすくなる可能性もあります。あくまで応急的な使用にとどめ、可能であれば早めに専用の切削油に切り替えることが望まれます。
KURE 5-56
KURE 5-56は、潤滑・防錆・水置換などの多機能スプレーとして広く知られており、軽作業時の簡易的な切削油代用として使われることがあります。潤滑性があるため、ドリルなどの工具を使う場面で摩擦を軽減し、加工面の焼き付きや工具の摩耗をある程度抑える効果が期待できます。
ただし、5-56は本来「機械のすべりをよくする」「サビを防ぐ」といった目的で開発されており、切削加工の熱や負荷を前提とした製品ではありません。冷却性はなく、長時間の連続加工や高精度な作業には不向きです。また、揮発性が高いため、油膜がすぐに薄くなってしまい、効果が持続しにくい点にも注意が必要です。あくまで一時的な対応として使い、正式には切削専用の油剤を使用するのが安全かつ確実です。
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よくある質問
Q.切削油の主成分は何ですか?
A.切削油の主成分は、その種類によって異なります。水溶性切削油は水をベースに、界面活性剤、潤滑剤、防錆剤、消泡剤などが加えられ、冷却性と作業性に優れています。一方、不水溶性切削油は鉱油を主成分とし、脂肪油や極圧添加剤、防錆剤などが含まれており、潤滑性や防錆性が高く、高精度な加工や重切削に向いています。用途や加工条件に応じて適切な成分を選ぶことが大切です。
Q.切削油は人体にどのような影響がありますか?
A.切削油は正しく取り扱えば大きな危険はありませんが、長時間または不適切に使用すると人体に影響を及ぼすことがあります。代表的な影響としては、皮膚への刺激やかぶれ(接触性皮膚炎)、切削油ミストの吸入によるのどの痛みや咳、まれに頭痛やめまいなどの症状が挙げられます。特に古くなった切削油や汚れた油を使い続けると、バクテリアの繁殖などによって刺激が強くなることがあります。
そのため、作業時には手袋や保護メガネ、マスクを着用し、肌への付着やミストの吸い込みを防ぐことが大切です。また、肌に付いた場合はすぐに洗い流し、長時間そのままにしないように注意が必要です。適切な管理と保護で、健康リスクは最小限に抑えられます。
Q.切削油と潤滑油の違いは何ですか?
A.切削油と潤滑油はどちらも「摩擦を減らす」ための油ですが、用途と機能が異なります。
切削油は、金属を削るなどの加工中に使われる油で、潤滑に加えて冷却・洗浄・防錆といった複数の役割を持っています。加工時の熱を冷ましたり、切りくずを流したりすることで、仕上がりの精度や工具の寿命を守ることが目的です。
一方、潤滑油は主に機械の可動部分(モーターやギアなど)に使われ、摩耗や焼き付きを防ぐことが主な目的です。加工中の冷却や洗浄は考慮されておらず、長時間の運転に耐えられるような安定性が重視されます。
つまり、切削油は「加工中に使う多機能な油」、潤滑油は「機械の動きをなめらかにするための専門的な油」と言えます。
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切削油のまとめ
切削油は、金属加工において欠かせない存在であり、潤滑・冷却・洗浄・防錆といった多くの機能を果たします。主に水溶性と不水溶性の2種類に分かれ、それぞれに適した用途や特性があります。水溶性は冷却性と作業環境の良さ、不水溶性は潤滑性や防錆性に優れており、加工材料や加工方法に応じて選ぶことが重要です。
また、切削油は劣化しやすいため、日常的な濃度管理や清掃、点検が欠かせません。さらに、法律や安全基準に基づいた適切な保管・廃棄も求められます。代用品を使うことも可能ですが、性能や安全性に限界があるため、あくまで一時的な対応とすべきです。
適切な選定と管理を行うことで、加工の精度向上、工具の長寿命化、作業者の安全確保など、多くのメリットが得られます。切削油は、加工現場を支える「見えない縁の下の力持ち」として、正しく使いこなすことが求められます。
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