ネジ山とは?ネジの基礎知識|特徴や用途、修正方法までを徹底解説
ネジは、家具の組み立てから工事現場、精密機器のメンテナンスまで、あらゆる場面で使われています。一見シンプルな部品ですが、実は細かな構造や使い方の違いによって、結果に大きな差が出ることも。本記事では、ネジの中でもネジ山に関する基礎知識から、修正のための道具、選び方のコツなどをわかりやすく解説します。「なぜかうまく締まらない…」そんな悩みを持つ方から、日常的にネジを扱う現場の方まで、きっと役立つ内容です。
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ネジの基礎知識
ネジというと、どれも似たように見えるかもしれませんが、実はさまざまな種類や部位があり、それぞれに意味と役割があります。基本を知っておくことで、適切なネジを選びやすくなり、作業の精度や安全性もぐっと高まります。まずはネジの構造や名称から、基礎をしっかり押さえていきましょう。ネジの部位と名称
ネジは一見シンプルな部品ですが、各部位には明確な名称と役割があり、それぞれがネジの機能性や使用目的に大きく関わっています。ここでは、ネジの主な部位とその名称について解説します。
駆動部(リセス)
ドライバーやレンチを差し込む部分で、ネジを締めたり緩めたりする際に力を加える箇所です。十字穴(プラス)、一文字(マイナス)、六角穴、トルクスなど、さまざまな形状があります。
頭部
ネジの最上部で、締結物の表面に接する部分です。なべ頭、皿頭、トラス頭など、用途や見た目に応じて多様な形状が存在します。
ねじ部(ねじ山)
ネジの軸に刻まれた螺旋状の溝で、相手材と噛み合って固定する役割を担います。ピッチ(ねじ山の間隔)や山の角度など、規格により細かく定められています。
先端部
ネジの先端部分で、相手材への食いつきやすさや貫通性に影響します。とがり先、丸先、平先など、使用目的に応じた形状が選ばれます。
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ネジ山とは?
ネジの締結力や安定性を支えているのが、ネジの“山”の部分です。このネジ山がしっかりしているかどうかで、固定の強度や使い勝手に大きな差が出てきます。ここでは、ネジ山の位置や形状、種類について詳しく見ていきましょう。
ネジの山はどこの部分?
ネジの山とは、ネジの螺旋状の突起部分を指します。この部分は、ネジが対象物にしっかりと固定されるために重要な役割を果たします。ネジ山は、ネジの軸に沿って一定の間隔で配置されており、この間隔を「ピッチ」と呼びます。ピッチが異なると、ネジの用途や適用範囲も変わるため、用途に応じた選択が必要です。ネジ山の形状と種類
ネジ山の形状や種類は、ネジの性能や用途に大きく影響します。以下に代表的なネジ山の形状とその特徴を紹介します。 三角ねじ(V形ねじ) 最も一般的な形状で、断面が正三角形に近い形をしており、ネジ山の角度は一般的に60度です。締結力が高く、振動などによる緩みを防ぎやすいのが特長です。機械・建材・日用品など幅広い場面で使われており、メートルねじ(Mねじ)やユニファイねじ(UNC/UNFねじ)がこの分類に入ります。 台形ねじ 断面が台形で、山の角度は一般的に30度です。滑らかな駆動が求められる送り装置や昇降装置など、回転を直線運動に変えるような場面で使われます。摩擦が少なくスムーズな動作が可能な反面、締結力は三角ねじより劣ります。代表例として「トラペゾイダルねじ」や「ACMEねじ」などがあります。 角ねじ 断面が四角形に近い形をしており、最も摩擦抵抗が少ないのが特長です。その分、締め付けによる固定力は弱いため、位置決めや運動伝達など“動かすこと”を目的とした機構で使われます。ジャッキや万力など、大きな力をゆっくり確実に伝えたいときに選ばれますが、加工が難しく、精度が出にくいため使用範囲は限定的です。 のこ歯ねじ(鋸歯ねじ) 一方向に鋭く傾いた山形が特徴で、進行方向には強く、逆方向には緩めやすいという性質を持っています。このため、力を一方通行で伝える必要のある機械装置などに向いています。たとえばプレス機やスライド機構などで活躍します。負荷が偏る構造のため、使用場所には注意が必要です。 丸ねじ(電球ねじ) ネジ山の頂点と谷が丸くなっている形状で、滑らかさと装飾性に優れています。摩耗にも比較的強いため、着脱の頻度が高い部品や、見た目を重視するパーツに使われることが多いです。電球の口金、ソケット部などが典型的な用途です。締結力や保持力はそれほど高くないため、補助的な固定に向いています。ネジ山と条数
ネジにおける「条数」とは、軸のまわりを巻くねじ山の本数のことを指します。通常よく見かけるのは、1本のねじ山で構成された「一条ネジ」ですが、それより多くのねじ山を持つ「多条ネジ」もあります。条数が変わることで、ネジの回転による進み方や、固定力・作業スピードといった性能が大きく変化します。 一条ネジ 1本のねじ山が螺旋状に巻かれている、最も一般的なタイプのネジです。1回転あたりの進みは少ないですが、その分しっかり締まりやすく、固定力に優れています。振動にも強く、締結用途に広く使われています。 多条ネジ 2本以上のねじ山が等間隔に巻かれているネジで、1回転で進む距離が長いのが特徴です。短時間で開閉できるため、頻繁に回すキャップや送りねじなど、スピードや効率が求められる場面で活躍します。ただし、締め付け力は一条ネジに比べてやや弱めです。 ネジカテゴリはこちらネジ山が劣化した!修正工具と注意点
ネジを締めようとしたら、空回りしてまったく効かない…そんなとき、まず疑うべきはネジ山の劣化です。無理に回し続けると、さらに状態が悪化し、部品交換や大がかりな修理が必要になることも。ここでは、ネジ山の修正に使える工具や、作業時に注意すべきポイントについてわかりやすく解説します。
ネジ山が劣化する理由
ネジ山の劣化は、強く締めすぎることで起こりやすくなります。これはトルク、つまりネジを回す力が必要以上に加わることで、山がつぶれたり削れたりするためです。サイズの合わないネジを使ったり、サビやゴミがたまった状態で締めることも劣化の原因になります。さらに、繰り返しの使用や不適切な工具の使用によって摩耗が進み、かみ合いが悪くなることもあります。ネジ山を修正する道具
ネジ山修正ヤスリ 潰れて変形してしまったネジ山を、手作業で少しずつ整えるための専用ヤスリです。ネジの溝に沿うような山型の目がついていて、ピッチに合わせて削ることで形を戻せます。ミリ・インチ・ガス用など種類が分かれており、複数の規格に対応する兼用タイプもあります。手軽に持ち運べて、ちょっとした応急処置にも便利です。特に、ツボサンやベッセルの製品が人気です。 ネジ山修正器(スレッドリペアツール) ネジの軸に工具を挟み込み、回しながら山をなぞるように整えていくタイプの修正工具です。ボルトのサイズに合わせて調整できるものが多く、目立った潰れがある場合でもスムーズに補修できます。手動で扱えるものから、電動ドリルに装着できるタイプまでさまざまあります。 ダイスとタップ ネジ山が大きく削れてしまったり、完全に潰れて形が消えてしまったときに使うのがこれらの工具です。ダイスは外側のネジ(ボルト)を削り直すための道具で、タップは内側のネジ穴(ナットや金属板のネジ部)を切り直します。新しいネジ山を作ることも可能ですが、サイズやピッチに合ったものを正確に選ぶ必要があります。 ネジ修正アダプター ダイスを固定して使うための補助器具で、より安定した作業をしたいときに役立ちます。太くて長いボルトや、途中で潰れてしまった全ネジなどの修正にも対応しやすくなります。特に現場での作業や、大きめの部材を扱うときにあると便利なアイテムです。 ユニバーサルスレッドリペアツール ネジ穴のネジ山がつぶれてしまったときに使う、内ネジ専用の補修ツールです。アームや刃の幅を調整できる構造になっており、ネジのサイズやピッチが異なる場合でも柔軟に対応できるのが大きな特長です。下穴を広げずにネジ山だけを整えられるため、部品を傷めにくく、繰り返し使うねじ穴のメンテナンスに向いています。作業中にネジを交換できない場面でも、再生という選択肢を与えてくれる便利な道具です。NOGAの「アイネス」などがあり、鉄やアルミなどの素材に使用可能です。修正時の注意点と工具の選び方
ネジ山を修正する際には、適切な工具の選定と正しい作業手順が重要です。 ネジのサイズとピッチの確認 修正前に、ネジの直径(サイズ)と山と山の間隔(ピッチ)を正確に測定してください。ピッチが合わない工具を使用すると、ネジ山をさらに損傷する恐れがあります。ピッチゲージを使用すると便利です。 ネジの種類の識別 ネジにはミリネジ、インチネジ、並目、細目などの種類があります。見た目が似ていても互換性がない場合があるため、事前に確認してください。 工具の正しい使用方法 修正工具は、メーカーの取扱説明書に従って正しく使用してください。例えば、ハンドルを締める際には工具を使用せず、手で締めることが推奨されています。 作業時の安全対策 修正作業中は、切削片が飛散する可能性があるため、保護メガネを着用してください。また、作業箇所を清潔に保ち、切りくずやゴミを除去してから作業を行ってください。 ネジカテゴリはこちら用途別:ネジ山の選び方
ネジ山の選び方は、使用する環境や目的に応じて慎重に行う必要があります。
締結用途(部品の固定)
部品同士をしっかりと固定するためには、締結力が高く、緩みにくいネジ山が求められます。一般的には、三角ねじ(V形ねじ)が使用されます。この形状は、締結力が高く、振動による緩みを防ぐ特性があります。
運動伝達用途(回転運動を直線運動に変換する)
ジャッキやバイスなど、回転運動を直線運動に変換する機構には、台形ねじや角ねじが適しています。これらのネジ山は、摩擦が少なく、スムーズな動作が可能です。
シーリング用途(液体や気体の漏れ防止)
配管やガス管など、液体や気体の漏れを防ぐ必要がある場合には、管用ねじが使用されます。これらのネジ山は、密閉性を高めるためにテーパー形状になっており、締め付けることで密着度が増します。
微調整用途(精密な位置決め)
精密機器や測定機器など、微細な位置調整が必要な場合には、細目ねじが適しています。細かいピッチのネジ山は、微小な動きを可能にし、精密な調整が行えます。
高負荷用途(大きな力の伝達)
プレス機や重機など、大きな力を伝達する必要がある場合には、角ねじが使用されます。角ねじは、ねじ山の断面が正方形に近く、摩擦が少ないため、大きな力を効率的に伝えることができます。
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ネジ山に関するよくある質問
Q.ネジ山が潰れた時の対処法は?
A.ネジ山が潰れてしまった場合は、状態に応じていくつかの対処法があります。軽く潰れた程度なら、輪ゴムをネジ頭にかませてドライバーで回したり、滑り止め液を使うと改善することがあります。ネジ頭が大きく潰れている場合は、ペンチや「ネジザウルス」で掴んで回す方法が効果的です。また、金ノコなどで新たに溝を切ってマイナスドライバーで外す方法もあります。電動工具が使えるなら、ネジ外し専用ビットも有効です。もしネジ穴(雌ネジ)の方が潰れているなら、タップで切り直すか、ヘリサートを使って新しくネジ山を作る方法があります。Q.「ネジをなめる」とはどういう意味ですか?
A.「ネジをなめる」とは、ドライバーでネジを回そうとしたときに、ネジ頭の溝(十字や一文字など)が潰れてしまい、ドライバーが空回りしてしまう状態を指します。この状態になると、ネジをうまく締めたり緩めたりすることができなくなり、最悪の場合は取り外すのが困難になります。「なめる」という表現は、ドライバーの先端がネジ溝を「こすって削る」イメージから来ており、DIYや整備の現場ではよく使われる言い回しです。防ぐためには、ドライバーのサイズをネジにしっかり合わせることや、まっすぐ力をかけることが重要です。工具やネジが摩耗している場合は、早めの交換も効果的です。 ネジカテゴリはこちらネジ山についてのまとめ
ネジ山は、ネジの中でも重要な役割を担う部分です。形状や種類によって適した用途が異なり、正しく選定・管理することで、作業の効率や安全性が大きく向上します。また、潰れや劣化が起きた場合も、状況に応じた修正方法や工具を使えば、多くの場合で再利用が可能です。ネジを正しく扱う第一歩として、ネジ山への理解を深め、丁寧な取り扱いを心がけましょう。
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